評価:
濱田岳,瑛太,関めぐみ,田村圭生,関暁夫,キムラ緑子,なぎら健壱,松田龍平,大塚寧々,中村義洋
本は以前から買ったまま、未読だった。

レンタル開始になってだいぶ経ったので、気がせいて未読のまま借りてきた。
悩みながら、本を半分ほど読み進み、後半にさしかかったところでDVDを鑑賞。
ちょっと禁じ手でした。
(映画は原作の要素をかなり忠実に映画化していたから)

結果として映像と本、どちらで「あ、そうだったのか!」というカタルシスを味わいたいかという好みの問題。
「葉桜の季節に君を想うということ」と同じような感覚の仕掛けが施されていますが、私は単純にこちらの作品のほうが好き。
仕掛け自体に違和感を感じなかったというか、解った後も「そりゃないだろ」とは思わなかったからかな。

本を読んでいて思ったのですが、本自体も映画化を念頭にいれたのかなっていうくらい映像的。
私は本を読むときに常に映像を頭に思い浮かべるタイプではないのですが、この作品は冒頭からなんというか景色が頭に入ってくるような文章。
主人公の青年・椎名がボブディランの「風に吹かれて」を口ずさむシーンがあり、それを聴いた河崎が「ディラン?」と声をかける二人の出会いのシーンから、全編にわたり要所要所でボブディランが流れているような気にさせる。
映像が浮かぶのも、BGMを文章に差し込んでいるせいかもしれない。
そして、この曲自体に彼らのその時々の思いが反映されている。
(この選曲自体がとっても映画を意識しているように感じられる。ここで口ずさむ歌がはやりのJ−POPだと映画からは離れていく気がする)

映像化も原作ものにしては珍しくといっていいくらい上手くいっていると思う。
キャストの勝利かな。
主人公である椎名を演じた濱田岳くんが個人的にはビジュアルからしゃべり方からドンピシャでした。
椎名は大学入学のために仙台へ引っ越してきた男子学生。
慣れない一人暮らし、慣れない土地、入学した大学。
不安と期待とないまぜになったような頼りなさげだけど気のよさそうな青年。
ボブディランの歌を口ずさんでいる姿や声もいい感じ。

瑛太や大塚寧々も原作の雰囲気を活かしつつそれぞれ映画の空気を作っていたんじゃないかなあ。

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)
アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)
伊坂 幸太郎

細かいエピソードや設定、話の運び方はやっぱり本のほうが好きだけど、ラストだけは映画に軍配をあげたい。
河崎じゃなくて椎名がやるからこそ、意味が出てくる気がする。
それでこそ、椎名が河崎と対等でいる(友人でいる)という意思を感じる。

青春小説、青春映画として観るととてもよくできていると思う。


蛇足ですがひとつ、引っかかるのは「勧善懲悪的な発想」かなあ。
最近、ミステリを読んでいるとここがすごく引っかかる。

卑劣なことをする人間がいる。
これでもか、と悪事を働き悪いと思うことはなく、良心の呵責もなく。

抗えない悪意が存在することを否定はしない。
浅はかな思考しか持ちえない人間がいることも。


けれども、片側の人間の行動だけが描かれ、心理がまったくみえない「類型的な悪」。
これって、読む(観る)人間の思考を操作して単純化してしまわないか?
ちょっと怖い。

たとえば、ニュース報道。
殺人、虐待、詐欺・・・。悪事の非道さ、犯人の反省のなさ、悪辣な言動。
そういった面だけが報道され、そこだけをみると「最低」としか思えない。
けれども、悪を記号化して片づけてしまうことに恐ろしさを感じる。
加害者を擁護するつもりはない。
けれども、客観的事実をほとんど知らぬまま罵倒したり悪態をつき放題でよいとは思わない。

もちろん、復讐することを肯定することも出来ない。

文章や映像で読んだり見たりしたことだけが事実ではない。
そう立ち止まって考える想像力が現代人にかけてきているような気がすることが一番怖い。

  • 2018.04.20 Friday
  • -
  • 12:07
  • -
  • -
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Comment
勧善懲悪について、近いことを感じていました。
流行もあると思いますが、今、世間的に「隙あらば悪を糾弾したい」タイミングなんでしょうね、きっと。報道にしても、何か、必死になって糾弾できるものはないかと探している感じが目に付きます。
よいとか悪いとか考える、その基準は人間の中にあるもので、時代とともに変わっていってしまうものですから、どんなに単純な犯罪だって、本当の意味で完全に裁ききることは出来ませんね。
そう考えると判決は常に、時代が下している、と思います。
  • オデッサ1905
  • 2008/04/11 16:24
>オデッサ1905さん
マスコミもそうですが、ネットも同じ傾向ですよね。。。
怒りをぶつけることは簡単ですが、ものの見方よりも個人のはけ口を用意しているかのような方向性が怖いです。

おりしも裁判員制度が来年から始まろうとしています。
12人の優しい日本人がコメディとして通用するような世の中とはまた別の世の中になっているような気がしてなりません。
人が人を裁くことの意味をもっと考えるべき時が来ているように感じます。
  • 鈴之助
  • 2008/04/13 11:53





   
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