映画・団地 〜団地は小宇宙だ!
- 2016.06.20 Monday
- 17:52
のっけからいうと、これは斎藤工の代表作の1本に数えられると思います。
プロフィールで映画は愛と誠、虎影、団地などって書かれるべき。
勿論、主役の藤山直美さんはじめ、団地の二組の夫婦のカルテットがあってこそ。
あの中にぶち込む人物として最高の役柄を貰ったんじゃないでしょうか。
映画は監督のもので、監督は観客を信頼し、役者たちは監督に委ねている。
それがびしばし伝わってくる作品でした。
昭和は昭和でも70年代の空気を濃厚に感じる作品。
団地ともおを思い出しながら観てました。
でも、ともおみたいな外見のやたら美声な小学生がでてきますが
ともおのように脳天気どころかかなり重たい人生を背負った小学生だったけど。
(しかし、良い声だった。演じていたのは、和泉流狂言師小笠原匡氏の長男・小笠原 弘晃さん。歌は有名な模様。)
主人公山下清治・ヒナ子夫妻(藤山直美と岸辺一徳)は漢方薬局をたたみ、団地へと引っ越してきた。
夫は毎日裏山へ散策にいき、妻はスーパーのレジへパートに行く日々。
淡々とした日常の中で、清治が些細なことから臍を曲げてしまい、家の中に閉じこもってしまう。
そこへ、処方されていた漢方をまた作って欲しいと依頼に現れる真城という男。
夫婦はある哀しみを抱えており、真城はそれを解決してくれるとのことで
せっせと大量の漢方薬を作りだす。
並行して、夫の姿がぷっつりとみえなくなったと騒ぎ出す団地の人々。
団地の濃厚な人間関係と、熟年夫婦の生活の機微、そこに放たれるちょっとした違和感。
それが、ある時は不穏になり、ある時は笑いになり、ある時は哀しみになる。
夫婦は淡々とでも真面目に生きていて、それが時にクスリと笑えるんだけど
その笑いの後に知らず知らず涙が流れるような悲しさがあって凄くいい。
清治が頼まれ毎に「いやいや、自分なんて」といいつつ裏ではその気になってる姿なんてまさに日本のオジサンの普遍的な姿だし
ヒナ子が中島みゆきの「時代」を歌いながらむせび泣くシーンもなんだかリアルでグッとくる。
なんと言うことはない話のはずなのに、真城という異物と清治の行動が、劇中の人々の妄想をかき立て
ひいてはビックリするような飛躍をみせる。
どの世界が自分たちのみえている世界なのか?
監督から小声で「いまみえている景色だけが全てか?」といわれているかのよう。
どんな人にも裏の顔があって、饒舌かもしれないし逆に無口かもしれない。
その人をどの角度からみるかで違う人物にみえたりするように
物事の側面を違う視点で見ると別のものがみえてくる。
その大きな例が「団地」。
団地は小宇宙、そして阪本監督は観客を飲み込むブラックホール。