先日、新大久保界隈を闊歩していて、
そういえば、今もこのあたりには韓国からの留学生がたくさんいるんだよなあと考えたら、学生時代の知り合いだった韓国の学生さんを思い出した。
その男性は美大に行っていたキムさんといった。
大学生のとき、高校時代の友人から誘いのあったツアーに
当時の私の同居人や友人たちが参加した。
そのツアーは下関から上海まで船、上海から列車で北京、北京から
飛行機で釜山、そこからソウル(逆だったか?)ソウルから船で
日本というようなツアーで17日間、10万円だったと思う。
その誘ってくれた友人の大学サークル主催で現地の学生との交流が企画されている旅だった。
返す返すも私は行けなかったその旅に、いまだに行きたかったなあと思うくらい土産話も楽しそうな話であった。
その時交流した学生さん達はたいてい日本語を勉強していて
日本に興味もある人達だったので、来る機会がある人も多かった。
そのうちの1人がキムさんだったのだ。
私が顔を合わせたのは2,3度だけなのだが、初対面は
忘れもしない。
彼はコメをしょって現れた。
そもそもの話のはじまりはこうだ。
キムさんは釜山から名古屋の親戚の家に泊まりに日本へ来ると
同居人に連絡があった。
せっかくなので東京にも足を伸ばし、お会いしましょうと
いってきた。その際に何かお土産を持っていきますが何がいいですか?
と聞いてくれた。
そばで話を聞かされた私と会話をしている同居人は
当時2人とも金欠で飢えていた。
コメが尽きた月末だったのだと思う。
同居人は
「コメかなあ」
と冗談で言った。言った後に
「いやいや、いらないよ〜お土産なんて。」
と言って、じゃあ東京に来るとき迎えに行くから知らせてねといって電話を切ったのだった。
キムさんが東京に来る日、東京駅だったか渋谷駅だったか覚えていないが
同居人は迎えに行った。そのままどこか案内するといっていたような気がする。
だが彼女は戻ってきた。
「あのーキムさんが一緒なんだけど・・・」
当時の私たちの家は、共通の友人も多く
しょっちゅういろんな人が出入りしていたので
そのときも何気なく私は
「あー?キムさん?名古屋からわざわざでしょう。どうぞ、どうぞ。お茶でも飲んでもらおう」
とかなんとか対応したんだと思う。
すると
同居人の背後からひょっこり顔を出したキムさん
「いやー女性2人の住む部屋なので、私は上がれません。これ、持って来ただけですから」
といって背中からコメ袋を下ろした。
10kg以上だったことは確か。
コメ袋を名古屋から新幹線に乗せ、東京まで運んできたのである。
いや〜軍隊に行った男は力強くていいね〜
ちがう、ちがう。
同居人は冗談で言ったことを真面目に実行してくれたことに対する
申し訳なさとここまで運んでくれた律儀さにすみませんねえといった表情。
私も思い切り恐縮してしまいました(笑)
なんでも名古屋の親戚はコメも作っているのだとかで
気持ちだからと笑顔でキムさんは言った。
いやーマジでまぶしかったですよ、笑顔が、白い歯が(笑)
コメを運んできてくれた神様って感じ。
そして玄関先にコメをおいて、これから奥には上がれませんからと
律儀にいいつつも、女性はもてないかも、重いものもってきてすみませんなどと謝られてしまって、いえいえとんでもないです、すみませんこちらこそ
などといいつつコメを運び込み
私も連れ立ってキムさんと東京の街へ遊びに繰り出したのであった。
キムさん、今も元気なんだろうか。