きみはいい子 中脇初枝著
- 2013.05.10 Friday
- 12:57
実は、デビュー作「魚のように」以来。
私自身が高校生の時に高校生が書いた話ということで読んで以来、本当に久々に読みました。
発売当初たまたま書店で見かけて、おお!懐かしい名前だと気になっていたのをようやく読みました。
魚のようには「書きたい!」という本人の叫びのような瑞々しさが鮮烈な文章でしたが
今回のきみはいい子は、伝えたいという気持ちがぐっと胸に迫る。
「いい子だね。きみは悪い子じゃない、知ってるよ」
作者が一人一人に語りかけている、そう感じる5作の連作短編集。
といっても、テーマは虐待ですから、重く辛い話ばかりです。
けれどもそれらをことさら悲惨に陰惨に描くことはしない。
辛い中に一つの希望をほのかに見せたり、空気が変わる瞬間を綴っている。
生きていれば、きっと良いことがあるよ、良いことがある瞬間を願っているよと文章が語りかけてくる。
私自身は、虐待を受けた子どもではなかったけれど、親のその時の感情や空気を敏感に察知していた記憶はまざまざと残っている。
中でも、母自身は忘れていて拍子抜けしたのだが
私がかなり小さかった頃、母がバスを待っているときに突然「実家に帰りたい」と号泣した姿は今でも目の前に思い描けるくらいの衝撃を受けた。
いまなるべく自分自身が豊かな心持ちでいられるように楽しく生きていることを意識しているつもり。
子どもには親は絶対自分を愛してやまないと自己肯定感を持って貰いたいし、伸びやかに育って欲しいと思っている。
けれども、親の立場になれば子どもにイライラすることなぞしょっちゅうあって、嘆きたいときもあれば、なんらかの踏み外しや暴走が虐待に繋がるようなこともあるんじゃないかという危惧もある。
義母にふと鈴太郎は私の顔色をみて行動しすぎている気がする等と云われると、そんなに自分の意のままにしようとしているのかなあと考え込むこともある。
だから私はこの言葉を呪文にしようと思う。
「きみはいい子」
「私もいい子」
わたしたちはがんばっている。
個人的には子育てで時に悩み、手探りしているすべてのお母さんにオススメ。
ただし。
私は、この物語の中に作者が辛くても良いときが必ず誰にでもあるからその時のために生きていて欲しいというメッセージを感じたのですが、辛い方に傾く話は落ち込むという方には無理に勧めません。