グランド・ブダペスト・ホテル 芸術は時に無力
- 2014.07.15 Tuesday
- 12:40
JUGEMテーマ:映画
ウェス・アンダーソン監督の最新作。個人的には、ロイヤルテネンバウムス、ライフアクアティックに続き3作目。
今回の作品が一番好き。
というか、前に観た2作は、監督の拘りや美意識は凄く感じたんだけど、それ以上の感慨や面白さを見いだせてなかった。今回の作品は、監督自身の美意識が微細に塗り込められた画面だけでなく、主人公のコンシェルジュ・グスタフの美意識や虚栄、ユーモア、気配りや高潔さが伝わるホテルでの活躍やその後の行動と、そういった個人の意志があっけなく踏みにじられるラストが深い余韻となって迫ってきて、ぐっときた。
愛や美や芸術や文学は、戦争や武器の前には無力なことがままあったし、あるんだよと監督に耳元で囁かれたようだ。
ケーキのおいしさに感嘆し、香水にうっとりし、仲間の協力に感謝して生きていてそれらが一瞬で無にきす瞬間がある日突然やってくるのが戦争。ひたひたと迫り来る足音に、平和を願い、人はみな平等であると思い、戦争は反対だと訴えても、権力と力は歯牙にもかけない。じっくり積み上げてきた美も絆もこなごなになる。それでも、人はその時々の権力や世間に翻弄されながら生きていく。そして、ああそんな時代もあったんだねと後の人々が振り返る。
ヨーロッパを舞台にした話なのに、私の心におりてきた言葉は「諸行無常」。
あらゆるものは変化し、そのままに留まることは出来ない、不変なものはないといったような意味合いでしょうか。
この感覚が今回の作品に私がシンパシーを感じてる理由、なのかなあ。
ヨーロッパの架空の国の戦争前夜といった設定なのだけど、今の日本の空気からもそんなに外れていないところがコワイ。カワイイ中にちょっと毒気がある作風といわれるウェスアンダーソン監督ですが、今回かわいさのレベルが群を抜いていると同時に、捉えようによってはちょっとの毒どころじゃない。
空恐ろしい。
カワイイ、綺麗と騒いで、ニヤニヤしているうちに後ろから唐突に鈍器で殴られて死ぬんじゃないかっていう怖さ。
これを現実で繰り返して欲しくないな。(といっても無力なんだよね。ああ)
最後に、役者さんたちについて。
グスタフ役のレイフファインズが品良くて凄くチャーミング。彼が主役を演じたことで映画の格もあがったかのようなぴったり具合。
マチュー・アマルリックはずーっとマチュー・カソヴィッツ(憎しみの監督、アメリとか出てた)と勘違いしてみていて、こんな顔だっけ?はて?と思いながら観ていて、パンフ購入して初めて、ああ、ミュンヘンでルイだった人か!とw
レア・セドゥとシアーシャ・ローナンはどちらもすごい好きな女優さんタイプ。可愛かった〜。
ティルダ・スウィントン。
好きな女優さんなのに(コンスタンティンの天使ガブリエルとかナルニアの白の魔女とか現実感のない役柄が大好きさ)、ぜんっぜんわからなかった!っていうか、全然わからないビジュアルになっている俳優が多すぎて思わずパンフ購入してしまった。
俳優陣みなさん有名どころばかりなのに誰だかわからんビジュアル等も多々ありながらそれぞれ見せ所があり、素敵でしたが、私が特筆しなければと思ったのがエドワード・ノートン。
この映画の彼は歴代No1のかっこよさ!ヒゲ似合う〜。フェンディのコートも軍服もステキ。ビジュアル、衣装、役どころどれもが男前でございました。