ヒメアノ〜ル 2人の森田君
- 2016.06.29 Wednesday
- 14:07
ヒミズや行け!稲中卓球部を描いた古谷実氏の漫画原作の映画。
といっても、私は、行け!稲中卓球部をちょっとしか読んだことがないくらいなので、ヒミズが漫画原作だというのも今回知ったレベル(で、ヒミズは映画も観ていない)。
今回も漫画原作だとは知らず。映画を観る気も実はそんなになかったのです。
が、別の作品を観ていたときの予告でこの「ヒメアノ〜ル」が出てきて、予告編で俄然興味が沸いたので観た。
前半は邦画によくある淡々とした日常における小さな奇跡的な恋愛を面白おかしく描くみたいな雰囲気だったのに、森田剛演じる森田君が画面に現れた瞬間にいきなりホラー&サスペンス調になる画面。
その予告だけでビックリしてしまい。これは観なければ、と。
実際観たら、予告の印象そのままでした。
不穏な旋律は冒頭から鳴っているんだけど、どっちかっていうと、ムロツヨシ演じる安藤先輩のほうがヤバイ雰囲気ぷんぷん。
安藤先輩は自分が恋したユカちゃん(佐津川愛美)とどうにかなるために、濱田岳演じる岡田くんに無茶ぶり。
岡田君が良い具合に押しに弱く日和見主義者なために安藤先輩のために色々と走り回ることになり。
安藤先輩と岡田君のやり取りがコントみたいで笑える。
が、笑って良いのか?とドキドキしているとドキドキの主は明後日の方向から忍び寄ってくる。
森田君である。
この森田君が大きく動き出すあたりでタイトルバックが登場。
ここまでに映画はすでに何十分も経過している。
これも斬新で格好良かった。
ジャニーズアイドルでそこそこおじさんといった年代に突入している森田剛が本当に森田君にハマっている。
この役をやるのにちょうどいい年齢というか。
回想シーンの高校生の時も違和感がないし、現代の荒んで、どうにも得たいが知れないかつ下卑た雰囲気もドンピシャ。
(パチンコ屋や漫喫で寝泊まりする姿が似合いすぎる・・・)
黙々と無軌道に殺戮しまくるんだけど、なんていうか可哀想という気持ちまで抱かせるんだから凄いなあ。
辛い記憶によって多重人格者のシリアルキラーになっているという感じだったんだけど、結構問答無用に人を殺していくので
あくまで岡田くんはこう思ってたけど、観客にそれが真実なのか否かはわからないという想像の余地がもう少し多めでもよかった気もするんだけど、ここは好みの問題か。
森田君の乾いた感じが映画の雰囲気を決定付けていて、怖いんだけどおかしくてもの悲しいというなんとも形容しがたい不思議な手触りの作品になっていた。。それが、エンティングだけ、ちょっとお涙頂戴に傾いた感じ。(原作どうなってんだろう?)
ハンニバルレクターばりに、一切の擁護がなくてもある意味「もの凄く魅力的な殺人鬼」だったゆえに。
いやあ、でも面白かったし凄かった。
主要キャラクターの人々が絶妙に観客の予想をナナメ45度裏切るような行動をとりまくる微妙な人物を上手く演じていて監督の手のひらで踊らされました。
乾いててトボけた笑いの間合いといいもの凄く好きなテイストです。
(あ、でも血しぶきや人体欠損などグロ系描写がダメな人には薦めません。)