最近、小説やエッセイのカラーが更にハッキリ以下の二派に分かれてきている気がします。

自らや周囲の生活の滅茶苦茶さ加減を露悪的に書くことで、自分で自分を笑い飛ばし、読者には「こんな生活自分には出来ん」って思わせるような凄みのあるタイプと、

資料や取材を重ねて構築されたリアリティ重厚な世界を舞台に描くエンターテイメント系の作品。

前者は最近のネット・blogの興隆も相俟って一見敷居が下がったような感じがするので以前よりも物書きになりたいって人が増えているんじゃないかと思う。
その分、逆に読者人口が減っている要因にもなっている気がしますけど。

リービ英雄氏が、日本文学の本質は私小説にあると言い
彼自身最新作「千々にくだけて」で自身を投影するような
話を書き上げている。
千々にくだけて
千々にくだけて
リービ・英雄

確かにそうかもしれない。私小説全盛となったのは大正くらいからだったと
学んだような記憶があるが、例えば、漱石、鴎外といった明治の文豪達も自分の生活や関わりのあった人、物事をヒントにモデルと思しき登場人物を出したり、エピソードを挿入したりしているから日本文学として研究者もよくそういった符号から作家の深層心理や作品にあるモチーフを読み解こうとする。太宰、三島はいうに及ばず。
最近などでも柳美里氏あたりは裁判が起きて有名になりましたが。


書かずにはいられないっていう何かを持っているのであれば
どちらでもいいのかなっていう気はします。
所詮、文章だってその人の頭の中から捻り出されているものなのだから。
ただあまりにも本人の生活を露骨に感じてしまうものは小説なのかっていう
疑問はあるけれども。
文章としてはスゴイと思ってしまいますが、作品としてはどうなのかってちょっと思ったりします。
言葉にするよりも文にするってやっぱり勇気がいると思うんです。
だって後に残るし、言うより文字で観る方が重いしキツイ。
こんなblogでさえ、書いたら面白いだろうけど影響でかそうなことは
書けません。でも非凡な人ってそれを踏み越えて書いちゃうか
もしくは、上手くフィクションのフィルターを通して書いてしまう。
踏み越えて書くのは、昨今話題のエッセイや自伝を上梓する人
フィルター通すのが小説ってところでしょうか。

昨今の作品はこのフィルターの目が粗くなっていて、結構すぐ作家本人と結びついちゃうっていうのが作品としての賞味期限を早めてしまっている気がしてならないのはちょっと残念。

一方の取材を重ねて、作者自身から遠い世界をリアリティを持って描く。
これも、そこまでして描く動機っていうものが作品から感じられるなら、楽しい+アルファがあって余韻が長く引く。
いや、楽しく読んでもらいたいっていう動機で書くというのもアリなんでしょうがそれって残らないんですよね。頭に。

どちらにしても、こんなことがあった、と書く先に浮かび上がっていく「何か」が欲しいなあ。最近小説読んでいるとそんなことを強く思います。

そういう意味で、村上龍氏の「半島を出よ」
これは面白かったです。正直、あまり好きな作家ではありませんでしたが
ちょっと見る目が変わりました。作者の知識と訴えたいこととか
危機感がこちらに迫ってきて、文章に迫力を与えている。
半島を出よ (上)
半島を出よ (上)
村上 龍


作者の主義主張や思想、背景が、その作品や文字から匂ってくる、そんな作品をもっと読みたい。

えこよみ
えこよみ
Think the Earth Project, 松尾 たいこ

梅雨の鬱陶しさを払ってくれるような暦の絵本。
イラストレーター松尾たい子さんの作品です。
ここに描かれている鳥が可愛い・・・。

東京南青山のスペースユイに可愛いキャメルと紺地のうさぎモチーフのTシャツが。

松尾たい子さんのHP
こちらでもグッズなどが購入できるみたいです。

うーん、素敵。

ペンギンの憂鬱
ペンギンの憂鬱
アンドレイ・クルコフ, 沼野 恭子

「皇帝ペンギン」を観たい・観たいと騒ぎまくっているせいか、この本目に留まりました。
ロシアの作品らしい。らしいというのはまだ買っていないし、読んでいない。でも面白い気がする。読んだらちゃんと感想書きます。読めるようにこうして先に書いておきます。

流星ワゴン
流星ワゴン
重松 清

親子って、親子って「すれ違い」なんだなあ。
親の気持ちがわかるようになった頃には親はいなかったりする。
親と子の間の切ない片思いといっていいかもしれない本。


そして夫婦もすれ違い、なのかもしれない。
けれども夫婦は同じ目線で生きてきている者同士。
例え、心が離れても、配偶者が元気な時にいくらでもまた向き合うきっかけがある。

親子であれ夫婦であれ、お互いの関係を修復することにきっと、遅すぎることはないのだとはなかなか思えない現実。

人間自分がイケイケどんどんの時には、人を思いやれないものなんですよね。自分がつらい思いをしてやっと、人のことまで親身になったり思いやったりできる愚かな生き物です。
でも、だからこそ面白い。

家庭の不和やリストラ、親の死も間近に迫った38歳のある中年男性。
死んじゃおうかな・・・
そう思った時に停まった一台のワゴン車。
男の運命はどう変わるのか。

人間、気の持ちようで運命も変わっていく。誰が悪いわけでもないのに、掛け違ってしまった人生。こうするべきだという明確な正解があるわけではない展開がリアルな心情の小説だと思う。

アイドル武者修行
アイドル武者修行
井ノ原 快彦

この本自体はまだ読んでいませんが、元になっている日経エンターテイメントのエッセイは連載当初から欠かさず読んでます。
いまや、流行の後追い分析や必要以上の持ち上げ記事が主となった感のある日経エンタメの中で、読むべき記事は、大リーガー長谷川選手とこのいのっちのエッセイだけといってもいいくらい。

この二人のエッセーは面白いし似ている。なんといっても魅力は率直さ。
お互い内幕といっていい、世間の人には見えないところの話を正直に、冷静に書いている。(もし二人がきちんと書いているなら文章も上手い。)

中でもいのっちのエッセーは、何かに注文をつけたり、批判めいたことを書いても必ず自分でおとすというか、自分へのダメ出しとそれを克服するためにどうしてゆきたいか、何を考えているのかを誠実に文面に綴っているのに結構びっくりした。それがうそ臭く聞こえないというところが際立っていたんですが、その理由はかなり自分をさらけ出して書かれているからではと推測してます。
このエッセーで彼に対する見方が変わっちゃったくらいです。
折りしも、交際宣言で話題になってましたねえ。

まあ俳優としては岡田くん岡田くんと大騒ぎしている最近ですが(笑)
この方、少年時代が映画になったりしてますし(ピカンチ)、文才あるんじゃないかなあ。脚本家とか何か文章を使って人や出来事を表現する方向へ行ったら面白いんじゃないだろうか?

幸福な食卓
幸福な食卓
瀬尾 まいこ

少女の中学から高校にかけての日常連作4篇からなる成長と家族の物語。

いろいろ悩んで家族を巻き込んでしまったお父さん。
別に住んでいるお母さん。
学校始まって以来の天才だけどギターが下手なお兄ちゃん、直。
そしてこの家族の長女である主人公、佐和子。

ちょっとずつ歪んでしまい壊れた家族が、また再生の道を探りながら、各々の心の傷を癒していく過程を淡々とした筆致で描く。
直と佐和子のそれぞれの彼女、彼という家族以外の親密な間柄の2人が、煮詰まった家族の関係を解きほぐそうともがく家族にとって新しい風になっている。
外からみていびつにみえる形でも家族がそれぞれ心を通わせることが出来るというのは、一種健全であり、理想的な姿。
主人公、佐和子は出来すぎなくらいの女の子で、そして10代にしていろいろ試練を与えられてしまっている女の子。
ラスト近くの急展開に茫然自失。
それでも、ゆっくりと起き上がってまた歩き出そうとする姿に素直に心打たれる小説。ちょっと弱っている時に読むといいかもしれない。

グランド・フィナーレ
グランド・フィナーレ
阿部 和重

先ごろ芥川賞を受賞した作品。
主人公は、ロリコン趣味が妻にバレ、離婚された中年。一人娘に会うこともできなくなっている。

娘への溺愛と少女性愛がごっちゃになっている非常に境界のあやうい人ですが、それなりに男女の友人がおり見た目にもフツウの勤め人のようだ。でもフツウの人っていうところが怖いな。明らかに異質であれば人は警戒するけれどもそうでないと注意のしようがない。

たとえば、今の会社にいる真性ロリコンとは明らかに異質な感じがする。
真性ロリコンでは呼びづらいので仮にロリーさんとする。
なぜそんなことがわかるのかといえば、PCの共有部分(LAN内なら他のPCからも覗けるところに)ごっそりと幼児&少女の画像をおいており、しかもたまに就業中見ているのを皆が知っているからだ。

ロリーさんは、見た目何を考えているのかわからない感じでいつも薄ら笑いをしている。眼鏡をかけて、微笑んでいるので一見優しそうに見えるときもあるのだが、基本ロボットぽいのでなんとなく不気味。
週のうち1日か2日は休み、後の日も午後出勤である。ちなみに我社はフレックスではない。そして残業はしない。

私は密かに想像している。

いつも朝近所の小学校に観察だか写真を撮りにだか行ってるんじゃないだろうか、と。お願いだから、妄想だけでやめておいてと願わずにはいられない。

そう現実に照らし合わせて考えると、文学でなくてはできなアプローチであっても、やはり現実とはかなりかけ離れた「いい人」のような気がしてならないのだ。この小説の主人公は。

さらに思う。女性は(男性でもいるだろうが)小さい頃ヘンなおじさんなり痴漢にあったことのある人が結構いるのではないかと思う。

私にも記憶がいまだに残っている。
10歳くらいの時に本屋か何かで自分に密着してきたおじさん。何かヘンだなと思いながら気持ち悪いので少しずつ移動してもついてくる。そのうち手がすうーっと伸びてきて体に触れられた時は反射的に飛びのいた。相手もびっくりしていきなり離れた。
そんな深刻なものではないと今なら思えるが、当時は本当に恐ろしく本屋の店員にいうこともできず、逃げるように家に帰った。
家族にもいえず、風呂に入るのさえ怖かった。風呂場の窓にその男の顔の幻影を何日もみた。
いまだに似たような顔の人は申し訳ないが、嫌いで近づかないようにしている。

もう一人、7歳くらいの時後ろからつけてきて、いきなり回り込んで写真を撮ったおじさん。そのあともうちょっと写真を取らせてもらえないかというようなことを言ったのだが、恐ろしくて泣きながら逃げ帰った。この人はバンダナを巻きひげ面の細身のジーンズを履いたヒッピーぽいなりをしていたのを強烈に覚えている。


この主人公が、飲み友達の若い女性に、友達でロリコンの被害にあって死んだ人がいると痛烈に批判されたくらいで、自分が欲望の対象にしてきた少女達へ後悔や悔恨の情を抱くくらいなら、最初からやらなかったのではないかと思えてならない。どうも作者と主人公の距離が近くなったり遠くなったりする―つまり、主人公を受容したり突き放したりが一貫していない―のでこういう感想を抱いてしまうような気がする。

それでも、ノンフィクションではないのだから、現実に即して細かく描写する必要はない。個人的な記憶を呼び覚まし、考えさせられたという意味では紛れもなく小説であり、力のある作品。
ただ外見上だけでなく、一見した心の中もフツウの人間でこういうことを現実にやられては私は恐ろしくて生きてゆくことができない。
自分の歪みくらい、一人一人自覚するべき。
歪みにふたをして正当化したり、普通を装ったりするからタチが悪いのだ。
ちょっとこの小説にはそのタチの悪さをどうしても感じてしまう。
うーん、けなしているわけではないのにどうしても非難がましい文章になってしまうなあ。村上龍の選評がしっくりきたせいかもしれない。

増量・誰も知らない名言集
増量・誰も知らない名言集
リリー・フランキー

今はどうだかよくわからないが、フジ系のバラエティココリコミラクルタイムで、なんだか気だるげに座っていてたまーにボソリと蜂の一刺しのような言葉を放っているのが、リリーフランキーである。本業はイラストレーターらしいが、説明しろと言われるとどんな絵を描いていたかちょっと間が空く(笑)みうらじゅん系の多才な人であるといっておく。

なんか遅刻が激しいと聞くが、この本の中でも本人まともな時間にまともに行動しているようにはあまり見えないのだが、TVとかやってて・・・大丈夫なんでしょうか?
ふつうに読んでいると、社会生活とはなんぞやって大きな疑問が浮かんできます。

人間、何時間遅刻しようがまともに働かなかろうがそれやっちゃおしまいでしょうっていう性癖があろうが、生きていけるもんなんです、たぶん。真面目に生きるのがアホらしくなってきますが、これがこの本の恐ろしいところで(笑)真面目に生きるのをやめると生きていけなくなってしまうものなのです、凡人は。だから真似も納得もしちゃいけないんですが、そういう境界をちょっと見失わせる本です。

なーんて書いてますが、半分以上はシモネタとの境界がつかないエッセイ。シモはシモでも男女関係ではないものがそのうちの更に半分くらい絡んでくるので、読んでいて最初気持ち悪くなってました、私。馬鹿です(笑)

ちなみに、映画好きとしては邦画にまつわるエッセイとして渋谷パルコブックセンターで村上春樹の新作を蹴落として、3週連続1位になったというこのエッセイを次は読んでみようかな。(そんな人気者だったのね・・・)

日本のみなさんさようなら



野ブタ。をプロデュース
野ブタ。をプロデュース
白岩 玄

この題名プラス帯の惹句斎藤美奈子の『「セカチュウ」で泣いている場合ではない。「野ブタ。」を読んで笑いなさい』これで読もうと思った作品。

信太(シンタ)という名前のかなりいけてないおどおどした転校生を「野ブタ」と名付けて、プロデュースする主人公桐谷修二。
面白半分、不安半分に始めたプロデュース稼業に、いつのまにかのめりこむ。
この主人公自身、自分で作り上げた自分を家族に対してもクラスメートに対しても演じている。彼曰く「着ぐるみショー」。
修二は容姿もそこそこ恵まれ、頭の回転も速く、会話のセンスもある。
だもので、結果的にものすごく周囲を馬鹿にしてるんですね。そして演じているうちに自分の本当の気持ちもよくわからなくなっちゃっているという。普通に育てられているのに人間不信と世間への憎悪を持っているこの主人公の性格付けと描き方が上手い。
思っていたのはコメディ&サクセスストーリーだったんですけど、芥川賞候補、文藝賞受賞っていうんだからなんらかの人間や世間を深く描いているはずだというのに中盤まで気づきませんでした。そのくらい語り口は軽いし、このプロデュースのアイデアや成り行きが面白くて上手い。この著者自身にそういう能力がある感じ。教室の雰囲気とか映像的で、会話のテンポも心の中の呟きもふるっている。

ただね、終わりが笑えない。

つまずきや急展開があるのはいいとしても、このラスト。ゲーム世代っていうのをあまり意識したことがなかったんだけど、このラストはそれをすごく感じてしまった。主人公に変われとは言わないけど、これって何も変わってないよね?
痛みを感じてもそれにフタをするだけじゃまた同じ問題にぶつかるんじゃ?

これだけ演じてりゃ、そりゃ疲れるわな。それでも演じているうちにそれが「素」になっちゃうってことある。野ブタくんがまさにそういう感じ。最初から意図はしてても基本は「素」。修二もそういった瞬間があったわけで。その時に感情よりも他人にどうみえるべきか?が浮かんじゃうところが切ないですね。この小説、全然終わってない。そこが良くも悪くもある。
修二の20代、30代を書いて貰いたいな。どうなってるだろう、彼は。

蛇足ですが著者がこの主人公のビジュアルイメージっぽい感じなので、人気がでそうだ。文藝賞、最近元気がいいですね。綿矢りさ等を含んで5年後、10年後どうなってるでしょう。今後を担う時代の書き手になっているのか。その方が気になるので山崎ナオコーラ同様今後に期待。

東京手みやげ案内
東京手みやげ案内

一ヶ月くらい購入を迷っているのだが、「散歩の達人」から出ているムック本。これは買いな気はいたします。この散達とdancyuあたりの食べ物の特集にはハズレがあまりない。

あ、その点女性誌はあまり・・・。昔はhanakoは結構良かった気がしますけど今はそうでもない。何より写真の見せ方は文章が良すぎて騙されちゃうんですよね。
食べ物は、食道楽なオヤジ達が読んでいそうな雑誌に限る。

表紙もなかなか素敵だったので、発売元のリンクを貼り付けておきます。
出版社は交通新聞社さんだったのね〜。
東京手みやげ案内


PR

Calendar

S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031     
<< August 2020 >>

虎影

Archive

Recommend

Recommend

Recommend

Recommend

Recommend

Recommend

Recommend

Recommend

スーパーマーケットマニア 北欧5ヵ国編
スーパーマーケットマニア 北欧5ヵ国編 (JUGEMレビュー »)
森井 ユカ
このシリーズは買い!スーパーで現地の生活も覗けちゃうし、お土産を探すにもよい一石二鳥な本。

Recommend

Mobile

qrcode

Selected Entry

Comment

  • アンジェラ〜15歳の日々My So-Called Life
    鈴之助
  • アンジェラ〜15歳の日々My So-Called Life
    アンジん
  • 調べもの学習に物申す
    鈴之助
  • 調べもの学習に物申す
    ナガイ
  • 【読書】武蔵、芸大、鳥類学者
    鈴之助
  • 【読書】武蔵、芸大、鳥類学者
    ながい
  • 長野とスピッツとカエル
    鈴之助
  • 長野とスピッツとカエル
    管理人 富樫
  • ブルックリン 故郷は遠くにありて想うもの
    鈴之助
  • ブルックリン 故郷は遠くにありて想うもの
    きまや

Link

Profile

Search

Other

Powered

無料ブログ作成サービス JUGEM